2012年02月15日

[Dragon Age 2]日本語版プレイヤーの感想への感想

 ラストシーンまでのネタバレが含まれます(^^ゞ

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 某所で見かけたプレイヤーの言葉。記憶に頼って書いてるから全く同じでは無い。

 「アンダースがテロりやがったのでぶっ殺してテンプルについた。化け物になった筆頭魔道士を倒したら何でか騎士団長までキチガイになって、両方ぶっ殺したらエンディング。つまんないゲームだった。」

 この人に掛ける言葉を私は持たない。もったいないね、と思うだけだ。中古で売ってくれたら、誰か別の人が買って楽しんでくれるかもね。

 しかしこういう類の感想はこの人だけが持つ訳では無いと言うところに、DA2が「名作」となり得なかった問題点があるかもしれない。英語版のプレイヤーだって結構大勢同じような事を言っていたし、中には911事件と重ねて批判する人も居たようだ。
 普通の人はゲームを遊ぶ時に、いちいちクエストマークも出ていないNPCに繰り返し問いかけたり、CODEXを寝ながら熟読したり、 台詞の意味を何時間も考えたり「普通は」しない。そんな事をするのはオタクだけだ。DA2はオタク向けのゲームだったのだろうか?
#日本語版の台詞の意味を考えるのはあんまり意味が無い。台詞の尺の問題で、ばっさり情報が削られていたり、別の言葉に置き換えられていたりするから。当たるなら原文。

 そもそもアンダースはテロリストだったろうか。本題ではないが、一応定義を参照して見ようと思ったら、何がテロリズムに該当するかというのは、実は世界共通の認識は無いらしい。えーそうなんだ。

 ただし、テロリスト(テロ集団)と言われる対象には一定の共通項があるようだ。
「現在の社会に対する強い不満」を持ち、それを解消するために
「暴力的な行動をとり、多くの場合無辜の他者を殺害」し、
「その行為を恥じることなく自らの大義の宣伝のため利用」し、究極の目的として
「現体制の転覆と自派閥(あるいは教派)による支配」を目指す、という所だろう。
 これは日本赤軍においても、あるいはIRAやETAでも同様である。社会に対する強い不満と、暴力的手段による解消についてはDA2内のアンダースの行動とぴったり適合する。大義の宣伝(いわゆる「革命の狼煙」)としても、他者に利用させる意図はあった。

 最後の「自らの派閥による支配」これについてはどうだろうか。チャントリーの対局としてMagocrate(メイジによる支配、D&D語源の造語)制度を敷くテヴィンター帝国があるため、それと同一視されがちではあるが、彼にはその意図はない。チャントリーによるメイジの支配も、その逆も"just"(正しい事柄)とはなりえないため、正義の精霊(Justice)と一体化した彼には認められない行動だからだ。
『他者への隷従を認める文明など、文明社会とは呼べぬ!そして隷従こそ、このサークルの真の姿だ!』
 おっとしまった、これはアルデノンの台詞だった(笑)。

 つまり、彼はチャントリーの不正義を糾すresistance(抵抗家)にはなれるが、その後の戦いを主導する事は出来ない。そのことがチャントリー爆破後のがっくりと座り込んだままの姿に現れている。あとは成り行きに任せるのみ。

 無論、無辜の人々を殺害する(murder)という核心部分の悪事については非難されてしかるべきだろう。その点はDA2内でもアヴェリンが指摘し、アンダースも同意している。同時に、その事が双方向で無ければならない、つまりテンプラー/チャントリーに対しても法の支配が及ぶべきだとも言及している。
 ここが以前ちらっと、DA世界は科学技術や食生活においては近世に近くても、舞台背景は中世を引きずっていると書いた理由でもある。チャントリーを監視する者は誰も居ない。テンプラーの腐敗、堕落を監視し糾すのがシーカー(探求騎士※1)の役割であるが、よほど大きな事件でも無い限り、いちいち出張っては来ないようだ。(※2)

 テンプラーのサークル内部における暴虐ぶりは、今更繰り返すまでも無いだろう。彼らはチャントリーの権威を背景にメイジに対する絶対的な強者となる。メイジ達は理由も無しに叛乱を起こしたりディーモンと手を結んだりはしない。ディヴァイン・ジャスティニアでさえ、アンドラステの言葉の元にメイジに対する非道が行われてきたことを認めている位だ(※3)。アンダース本人も、DA2の中では語ろうとしないが、サークル時代(※4)に脱走の罪で、独房にネズミのMr.wuggetsのみを友として一年間放り込まれている。

 彼は、あるいはオシノは、メイジで有る事以外に何も悪い事はしていない。それを言論で説こうとしたのがアクト3冒頭の大演説だが(メイジ版プレイスルーを書いた時に、述べ5回くらい通しで聞く羽目になった)聞く耳を持たないメレディスに脅かされ、エルシナの仲介でサークルへと戻されている。つまり、この世界では言論は役に立たないのだ。彼らがいかに言論を持って自由を求めようとも、強者であるテンプラーと、それを支配するチャントリーが変わる事はあり得ない、という事がエルシナとの会話、あるいはメレディスの台詞から繰り返し示される。
 それでもまだ、メイジが暴力で抗議するのは良くない事なのだろうか。可愛い猫だって追い詰められれば牙を剥く。あ?それは鼠だっけか。なんか今自然に間違えた。

 そしてカークウォールで上がった狼煙はテダス各地に伝わり、カレッジ・オブ・メジャイに集った各サークルのファースト・エンチャンター達はチャントリーからの独立を宣言することになる(※3)。ただし、この会合にホーク一派、あるいはアンダースは関与していない。してたらシーカーが知らないはずが無いからね。

 さて、それでも多くのプレイヤーに、アンダースが身勝手なテロリストと思わせてしまう理由は何だろうか。やはり、テンプラーの暴虐行為を台詞だけでは無く、きちんとカットシーンで見せるべきでは無かったか。(開発工数削減ハンターイ!)
 視覚によるインパクトというのはとても強い。例えばサディスト・オーリックのサディストぶりを実際にカットシーンで見せた瞬間、プレイヤーほぼ全員がテンプラーに背を向けるだろう。だから最後にメイジvsテンプラーの選択をさせるために、あえてスキップしたのでは無いかと半年ほど前に書いたが、ちょっと考え直した。別に良いじゃん。

 ヴァイカウントとなったホークも2年後には失踪している(※5)。どちら側にしても上手く行かないというところであれ?と思わせるのは構わないが、DA2をもっと判りやすい、テンプラーによるメイジへの抑圧、はぐれメイジのディーモンの力を借りた反抗と更なる弾圧、そして最後の解放というストーリーにしても良かったのかも知れないと思った次第。

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(※1)とても良く出来た日本語版ではあるが、「探求騎士」この訳語は情けない。何を探求しとるねん。騎士(Knights)とちゃうわい。ぶつぶつ。固有名詞(Seeker of Truth)なのだから、シーカーで良かっただろうに。映画ではシーカーズにテンプラーズとカタカナのままきちんと複数形になっていた。日本映画では珍しいかも。

(※2)アクト3で元のクナリ収容所を覗くとシーカーの印がある。この時点でようやくカークウォールに注意を向けたのだろう。

(※3)ゲイダー氏の小説"Asunder"より。この話はカークウォールの出来事の後、カッサンドラがヴァリックを捕まえて尋問する前の2年間に挟まっている。

(※4)ゲイダーさんへのインタビューによると、時期的にはアルドレッドがディーモンを召還する直前の事らしい。

(※5)この理由を、例のリリウム剣(吹っ飛んだけど)のせいで狂気に陥ったためとする同人小説があった。所詮妄想だが、結構納得出来る説かも知れない。当然、あの後メレディスの死体はテンプラーが管理することになるだろうからね。メイジ側の場合はカレンか?

posted by Laffy at 00:18 | Comment(2) | TrackBack(0) | [DA2]日本語版
この記事へのコメント
興味深く読ませていただきました。

アメコミ『ウォッチメン』の黒幕のように
「しなければならないことをした、だがこれからは自分が殺した大勢の人々を毎夜夢見ることになるだろう」
的に血塗られた道を選ぶのがアンダースの行く道で、
個人的には肯定できませんが、誰かが行動しなければ理不尽な統制が
まかり通る世界が永遠に続いたであろうことを考えると
やはり『必要』なものだったのではないか等と色々アタマの使い甲斐があるなと
ザッとプレイして感じた次第です。
(でももっと単純なヒーロー活劇でもよかったよな、とも…)

以前
「許しあわないから戦争はなくならない。2の仲間はそれが出来ない人間が小さいヤツばかりだ」
と言う感想を見て辟易した覚えがありますが、『人間はそれができない』というのが
このゲームのテーマの一つかなあとボンヤリ考えてみたり…。

通りすがりで失礼いたしました。
Posted by 通りすがり at 2012年02月15日 14:48
コメントありがとうございます(^.^)。
 あの世界で自分は殺人も窃盗も売春も自由気ままにやってるのに、アンダースの行動だけ、皆唐突に現実世界モードに戻って批判するのはどうなんでしょうね。まあ端から見ていると面白いですが。

>>「許しあわないから戦争はなくならない。2の仲間はそれが出来ない人間が小さいヤツばかりだ」
>>『人間はそれができない』というのがこのゲームのテーマの一つかなあと
 あっはっは。いやおっしゃる通りだと思いますよ。フェンリスが言っている様に、許したいけど許せない、そこの葛藤を描いたドラマだと思います。だいたい、そんな聖人君子の出て来るゲームなんて有りますか?(あるかも知れないな、JRPGなら)。
Posted by Laffy at 2012年02月15日 21:16
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